皆さんの好きなピアノ曲はなんですか?
その曲をふと耳にすると、おそらく懐かしい思い出の情景が目に浮かぶのではないでしょうか?聴覚は時間の感覚を認識し、脳の最も古い大脳辺縁系という部分に直結して感動することに強い影響を与えるそうです。
ピアノは様々な音楽を聴いて楽しむと同時に、演奏に憧れを抱く楽器でもあります。ただし誰でも一朝一夕に弾けるようになるものではなく、お稽古の期間には苦い思い出も残るものです。しかしいつのまにか日常生活に溶け込み、個人を人間的に成長させてくれた存在ではないでしょうか。
最近はいいものを長く使う価値観よりも、”使い捨て”の習慣が浸透し、古くなったモノ、使われなくなったモノは処分される傾向にあります。モノによって便利さを追及すべきですが、新築の家の中に木やフェルトなどの自然素材で作られた古いピアノが一つ残っていることは、ご家族の思い出と共に絆や趣を感じさせるものがあります。
一昔前のピアノは一般家庭に手の届かない高価な嗜好品でした。その当時はピアノを購入するために、祖父母世代の援助や貯蓄を重ねてやっと手に入れたというご苦労の経緯をよく耳にします。
ところが、子どもの成長と供に使われなくなったピアノは休眠ピアノと呼ばれ、ご家庭にひっそり佇んだまま年月が経過。ピアノは鍵盤しか見えないのですが、内部は木や高級な羊毛による自然素材で構成され、全く別物に豹変しています。
当調律所は、約60年前の古いピアノの修理実績を持ち、このような先代の想いとご家族の思い出の詰まった古いピアノを次の世代に弾き継いでいただくことを願い、再び家族の音を蘇らせ皆様と喜びを共有させていただければ幸いです。
さらに国連総会によるSDG'S(持続可能な開発目標)に掲げられた17のグローバル目標のうち第12.生産と消費について、古いピアノを再利用することは、この行動計画の一助と成り得るでしょう。
1722年クリストフォリ製作による最古のピアノ
ピアノは1709年にイタリアで発明され、バッハ、モーツアルト、ベートーベン、ショパン、リストなどの有名な演奏家らの登場と優秀な技術者の手によって次々と改良され、1800年代の終わり頃には近代ピアノとほぼ同じ構造に完成しました。
国内では1900年にヤマハが国産初のアップライトピアノを製造、続いてカワイも製造を開始しました。第二次世界大戦後、浜松には約40社のピアノメーカーがひしめき合い、欧米に追い付こうと音質の向上を進め日本独自の大量生産の技術開発などによって目覚ましい発展を遂げました。1980年にはヤマハ、カワイの生産台数はアメリカを抜き世界第1,2位に躍り出ています。
その後電子ピアノの普及や少子化により生産台数は減少傾向ですが、世界有数の国際ピアノコンクールで国産メーカーは常に脚光を浴び、現在もその品質や安定性と価格においてプロのピアニストだけでなく世界中のピアノ愛好家から根強い定評を受けています。
ピアノの音、外観、鍵盤タッチ、弦の状態などを内部まで確認させてただき、楽器としてご利用いただくお見積り金額を提示させていただきます。
更にお客様のご予算やご希望に合わせて、ご相談しながら作業を進めさせていただきます。
まずはお電話にてお気軽にご相談下さい。
・ご都合の良いお日にちを何回かお伝えください。夕方の時間帯や土日も対応しております。
・気になる症状をお伝えください。例えば鍵盤が上がらない所がある、ピアノが汚れているなど
試弾及びピアノを分解しながら修理内容と金額を提示し、ご相談しながら細かい内容を決定させていただきます。
日常のお手入れや注意事項をお伝えいたします。ピアノの外観だけでなく内部もリフレッシュし、心地よい音が蘇ります。
弦の錆や金属疲労などによって切れた弦を張り替えます。
断弦を放置すると弦の張力バランスが崩れ、音律が狂ったり、他の弦も切れやすくなります。
バス弦が切れた場合、音楽会直前の場合はピンチ。また、新しい弦に張り替えると両隣の古いバス弦と音色が変わってしまう可能性があります。これらを回避するためスプライシング(弦つなぎ)による修理が有効です。
非常に扱いにくい太い弦によるこの修理は、技術書「ピアノの探究」で詳しく解説されています。
湿気により膨潤したクロスにセンターピンが貼り付いて動きが悪くなるスティックという故障や、クロスの過乾燥によりセンターピンが緩んで雑音が生じたとき、適切なサイズのセンターピンに交換します。
ハンマーの汚れがひどい場合や、形が潰れている場合、弦溝が深い場合には、ハンマーを丁寧に一つ一つやすりで削り、アイロンこてで表面を仕上げ、音色に息を吹き返らせます。
硬化したハンマーフェルトに特定の位置と深さで針を刺し、各鍵盤の音色を一つ一つ揃えます。
鍵盤の下の部品が動いて当たる部分や擦れる部分には、雑音防止と摩耗防止のためにあらゆるところにフェルトやクロスが使用され、蛾やカツオブシムシの格好の餌を提供しています。定期的なクリーニングと防虫剤の投入が必要です。
古いピアノの象牙鍵盤は、汗や汚れが浸み込んで黄変していることが多々見受けられます。
漂白作業によって、白くきれいな白鍵に蘇ります。
現在、象牙はワシントン条約によって入手できませんので、古いピアノとはいえ希少で価値が高いです。
てこの動きをしている鍵盤には、タッチを調整するため側面に鉛が挿入されています。この鉛が経年劣化により膨張し、隣の鍵盤に接触して動きが悪くなっていた例。ひどい部分は鍵盤が破損していました。
弦を打つピアノのハンマーは、音域幅の長い木の芯に、熱と圧をかけて羊毛をくるんで接着されてから、一つ一つのハンマーに裁断され作られています。写真のようにフェルトが剥がれていた場合、新しい部品に交換するのではなく、接着し直します。隣接するハンマーと音色が変わってしまうからです。剥がれて広がったフェルトは意外と固くて力仕事、弦を打つ衝撃で再び剥がれないよう、万力などを使って確実に接着します。
金属部分を磨くと新品のようなピアノに見違えるように生まれかわります。
長年大切に使われてきたピアノを、ご家庭の事情により、やむを得ず手放さなくてはならなくなったお客様から依頼を受けて再調整、修理したもので、弾き継いでいただける方を探しています。
45年前に製造された古いピアノですので、音律はもちろん、軽快なタッチと、粒の揃った心地よい音色に丁寧に再調整済です。内部は経年変化による響板含水率の低下で音の反応や響きが向上し、年相応の奥行きある豊かなヤマハサウンドを奏でてくれます。
調律師及び演奏者の両面から音量、音色の音域バランスを考え、鍵盤を押すと顔がほころぶ楽器に仕上げております。
是非、ご試弾されることをお勧め致します。
上記の中古ピアノご興味のある方は、当調律事務所までお気軽にお問い合わせください。お渡しまでの流れや、お支払い方法(現金/銀行振り込み)や、配達場所、時期など、お客様のご希望もふまえてお伝えさせていただきます。